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2019年10月 2日 (水)

平安と中世の狭間で編まれた『後拾遺和歌集』

 ぶ、ぶ厚い……

 岩波文庫の『後拾遺和歌集』手に取って、そのぶ厚さにちょっと驚き。

 この分量なら、上下二冊刊だったろうに、日本の製本技術の向上に感動しつつ、購入しました。

 古今集など有名な勅撰和歌集は、角川文庫にも収録されていますが、他の勅撰和歌集の文庫は、岩波文庫ぐらいしか見かけません。

 しかも、かなり以前の出版だから、字が小さい……読みずらい…… 

 以前は講談社学術文庫に『後拾遺和歌集』出てたみたいですが、品切れ中。

 新日本古典文学大系のを底本として、注などを改変して文庫化された『後拾遺和歌集』、白河天皇による第四の勅撰和歌集を文庫で手軽に読めるのは、古典好きには嬉しいです。

 ハードカバーだと、本棚に収まり切れなくてねぇ。

 『後拾遺和歌集』を読んで、感じたのは、女性歌人の歌が多いな、ということです。

 和泉式部や赤染衛門などの歌を多く選んだということは、彼女たちの歌の力を選者が認めた、ということでしょうか。

 岩波文庫からは、他の勅撰和歌集も出してほしいです。

 古今和歌集や新古今和歌集だけが、勅撰和歌集じゃないぞ。

 ということを、古典を食わず嫌いの人にも知ってほしいです。

 

↓ 姿秋の月のほがらかに、言葉春の花のにほひあるをば、千歌二百十あまり八つを選びて二十巻とせり。

後拾遺和歌集 (岩波文庫 黄 29-1)

2019年10月 1日 (火)

文庫で読み直し『魂の沃野』上下

 北方健三の『魂の沃野』上下巻が中央文庫で文庫化されました。

 ハードカバー版は購入していましたが、本棚のスペース確保のために、文庫に買い替え。

 サイズダウンしても、内容はそのまま。

 加賀の国を舞台に一向一揆が「百姓ノ持チタル国」を作るまでの物語を風谷小十郎を中心に描かれています。

 下巻の巻末に収録されている解説が、一向一揆を扱った作品についても言及しているので、加賀の国を舞台に創作二次小説を書いている私としては、とても参考になります。

 権力者VS百姓。

 単純にそれだけの構図ではなかった一向一揆を、血と肉が通った人間の思惑を書いた『魂の沃野』。

 物語の最後、旅立った小十郎はどこへ行く?

 読売新聞連載終了時に思った答えは、今もまだ出ない。

 

↓青春は留まらないものだから、小十郎は走り続ける

魂の沃野(上) (中公文庫) 

魂の沃野(下) (中公文庫)

2019年9月24日 (火)

絵が欲しい……『中世王朝物語全集22 物語絵巻集』

 ぶ厚い!

 全集の中で一番のボリュームです。

 『中世王朝物語全集22 物語絵巻集』をやっと購入。

  物語絵巻の藤の衣物語・下燃物語・豊明・なよ竹物語・掃墨物語・葉月物語の六作品が収録。

 「鎌倉時代物語集成第七巻」にも収録されている作品ですが、現代語訳や系図、絵の説明、解説がとても詳しくされているので、全く初めてこの六作品に触れる人でも、楽しく読めます。

 とくに、「藤の衣物語絵巻」は注目。

 「遊女物語絵巻」と呼ばれていた「藤の衣物語絵巻」の復元と題名変更の経緯を興味深く読みました。

 もとの絵巻には、「ちそうのそうし」という紙片が添付されていたそうですが、漢字にすると「馳走の草紙」?

 物語冒頭、若き人が住吉詣での途中で長者に歓待されたことを指す?

 最初にこの物語絵巻を紹介した楢崎宗重氏のよる題名「遊女物語絵巻」は、長く用いられてきましたが、本書の校訂者である伊東裕子氏による「藤の衣物語絵巻」の題名は、物語全体を見ると、「遊女物語」よりもしっくりきます。

 単なる遊女の物語ではなく、喪服・僧衣の藤の衣を纏う人たちの物語であることを前面に押し出した題名変更は、確かに「藤の衣」のほうがふさわしいと思いました。

 他の作品も、「増鏡」「とはずがたり」との類似性を指摘されていて、中世物語と後嵯峨天皇時代の歴史背景との関係が好奇心をくすぐられます。

 ただひとつ、不満な点を言えば、絵巻物語なのですから、絵も収録してほしかったです。

 「新蔵人物語」や「ちごいま物語」のように、絵と画中詞が一緒に収録されていたほうが、イメージがわきやすいと言いますか、絵巻物を読んでいる気分になったです。

 絵がない不満以外は、力作の1冊と言えます。

 

↓絵がないけど絵巻物語

中世王朝物語全集 22 物語絵巻集

2019年9月19日 (木)

お手本になるわ……『58歳から日々を大切に小さく暮らす』

 結婚してもしなくても。

 子供がいてもいなくても。

 いつかひとり。

 

 ミニマリストに興味津々、てうかミニマリストになりたくてスローペースでお片づけ中の私。

 今大人気のシニアブロガー、ショコラさんの『58歳から日々を大切に小さく暮らす』、初めはミニマリストの本と思って手に取ったら、そうでもない。

 ほどほどの断捨離で、贅沢せずに、節約もして、たまにご褒美、本当に必要な物、本当に好きな物だけで暮らしています。

 これだ!

 私が目指しているのはこのくらいの、無理しないで、身の丈に合った暮らしです。

 ミニマリストの究極は、お部屋に何にもない、ということになるのでしょうが、そこまでやれる自信は、はっきり言って私にはありません。

 『年収90万円でハッピーライフ』の大原さんや、『ぼくたちに、もうモノは必要ない』の佐々木さんレベルのミニマリスト生活にあこがれていますが、家族と一緒だと、ちょっと無理。

 でも、ショコラさんの暮らしぶりだと、私でもなんとかなりそう。

 結婚して、離婚して、子供たちは独立しておひとり様ライフを楽しんでいるショコラさん。

 楽しいことばかりではなく、苦労もあったそうですが、人生を楽しんでいることがわかります。

 いつか私も一人暮らしになる。

 来るべき未来の生活に、お手本にしたい本です。

 

↓毎日を大切に生きていけば、贅沢なんていらない。

58歳から 日々を大切に小さく暮らす

 

↓こちらもお手本にしてます。

ぼくたちに、もうモノは必要ない。増補版 (ちくま文庫)

年収90万円でハッピーライフ (ちくま文庫)

2019年9月 1日 (日)

藤原氏の栄華の終焉……『籬の菊』

 古典のような歴史小説だわ。 

 前から読みたかった文芸社の歴史文芸賞最優秀賞受賞作、『籬の菊』を読んでみて、これは最優秀賞受賞したのも当然と思いました。

 時は後冷泉天皇の時代、東宮の姫に仕える女房、兵部は、父親が早くに亡くなったために、行き遅れの身の上を嘆いていました。

 乳母子の雛子が大臣のお手付きとなり、懐妊して玉の輿に乗ったものですから、鬱屈は募るばかり。

 ついには主人である大君に、「誰ぞ良き男君あらば、仲立ちさせ給え」とお願いします。

 それが兵部の運命の変わり目。

 本人はちっとも気づきませんが。

 そんな中、東宮御所に鵺が現れたり、雛子が呪詛されて闇やつれてしまったり、挙句の果てに、兵部自身も穢れに侵されてしまう!

 後冷泉天皇の東宮といったら、異母弟の後三条天皇。

 後三条天皇が東宮時代に、藤原頼道から盛大に嫌がらせされたことは歴史上有名。

 『籬の菊』は、後三条天皇が雌伏の時を経て、即位する前後を描いていますが、その中で兵部が乳母子を、東宮を助けるためにとった行動が、大君へしたお願いが成就する話の流れは、うまいなぁ、面白いなぁと思わず唸ってしまいました。

 ネタバレしてしまいますが、兵部こそ、後三条天皇に寵愛された源基子。

 三条天皇の第一皇子、小一条院を祖父に持ちながら、父が源氏に臣籍降下したために、皇女、女王に生まれることができなかった出生に、不満たらたらでしたが、宮仕えの中で、大君の器の大きさや、後三条天皇こそが帝位につくべき人物と認め、自分の妬み心を反省して生きるという人物設定されてます。

 こんな基子だったから、後三条天皇も寵愛したんだと思える話でした。

 でも、基子が生んだ皇子二人は帝位につくことはできず、第一皇子である白河天皇が栄えることになるのですから、人生はうまくいかない。

 自の文は現代語で、セリフは平安時代のものなので、歴史小説でありながら古典読んでいる気分になります。

 摂関政治から院政への過渡期を切り取った歴史小説としては、面白い読み物でした。

 作者の阿岐有任には、白河天皇の周囲の女性を主役に続編を書いてもらいたいです。

 本作では兵部の手紙を読んで、壺切りの太刀を取り戻すべく即動いて、兵部と協力的でしたが、皇位継承となると、そうはいきません。

 白河天皇は、自分の子孫に皇位継承させるべく、あれこれしましたからね。

 

 ↓侍女から御息所、女御へ

籬の菊 (文芸社文庫)

 

↓道長死後から頼道時代の藤原氏と後三条天皇のことが記載されています

新編日本古典文学全集 (33) 栄花物語 (3)

 

↓後三条天皇が登場する作品
夜露姫

 

 

2019年7月24日 (水)

SF忍法帖『機忍兵零牙 新装版』

※ちょっとだけネタバレ感想

 本屋さんで、ハヤカワ文庫の百合SFフェアなるコーナーが設置されていました。

 そのうちの『機忍兵零牙 新装版』は、いかにもSFのタイトルで、裏表紙のあらすじも、亡国の姫君と若君を助ける忍者と悪の一味と戦うといった内容なので、

 どこが百合だ?

 と疑問を持ったので、思わず購入。

 読んでみると、百合小説というより、やっぱりSF小説。

 地球?から異世界に連れてこられた記憶喪失の忍び、零牙たちが、記憶を取り戻し、自分のいた世界に戻るために無限王朝という敵に戦いを挑むというストーリーは、山田風太郎ばりの忍法+異世界SFと言った方が正しいです。

 真名姫と、忍びの少女、螢牙の関係が、百合と言えば百合……かなぁ。

 無理やり百合ジャンルに入れなくてもいいかも。

 ただ、最後に螢牙の名を真名姫が継いで、忍びの仲間になるというエンディングには、うるっときます。

 ところでこの話、続きは出てないの?

 敵は倒したけど、零牙たちの記憶は取り戻していないし、地球に戻れてないし、まだまだ物語は続くよ、みたいな感じ。

 

↓闇より出でし光の牙

機忍兵零牙〔新装版〕 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

2019年7月10日 (水)

若き復讐者と超絶美形鬼『鬼憑き十兵衛』

※ちょっとネタバレあり

 『ネガレアリテの悪魔』が面白かったので、著者、大塚己愛の日本ファンタジーノベル大賞2018受賞作、『鬼憑き十兵衛』も読んでみました。

 江戸時代初期を舞台にした本作、ヴィクトリア王朝を舞台にした『ネガレアリテ』とはまた違った雰囲気。

 主人公は剣の師匠であり実父を殺された十兵衛と、彼に命を救われた僧形の鬼、大悲。

 師匠の仇をとらんと、細川三斎(細川ガラシャの夫)の愛妾、安珠を狙う中で、十兵衛は異国の少女と出会います。

 少女を紅絹と名づけた十兵衛は、群れから弾かれた者同士、無意識に紅絹と両想いになっていきますが、紅絹はただの少女ではありませんでした。

 作品中、それらしい伏線がありましたが、やっぱりそうかと思った紅絹の正体は、せいれんと呼ばれる人魚。

 そして、安珠の正体も土蜘蛛。

 鬼、人魚、土蜘蛛と、妖怪変化が当たり前のように出てくるけど、それがとってつけたような設定ではなく、物語に必然であると納得できる設定なので、自然に物語に没頭できました。

 キリシタンや公儀隠密も十兵衛に関わり、紅絹がさらわれたり、命を狙われたりして、苦労する十兵衛ですが、そんな時大悲が助けてくれるとこは、いい時に来た! と思う反面、都合よすぎるとも思いました。

 まあ、バディ物の相方が、並の人間ではなく、鬼だから、ま、いいか。

 最後に十兵衛が仇を討って、人ではなくなり、大悲と旅立つ終わり方は、続編を意識している?

 

↓妖怪も怖いが、人の欲もまた怖し

鬼憑き十兵衛

 

2019年7月 4日 (木)

俺様将軍×天才能楽師×じゃじゃ馬内親王『室町繚乱 義満と世阿弥と吉野の姫君』

 現在創作二次小説書いておりますが、室町時代はマイナーなので、イマイチイメージが掴めないので、絶賛遅延中。

 室町時代を舞台にした小説でも読んで、イメージを膨らませなくちゃ、と思って読んだのが『室町繚乱 義光と世阿弥と吉野の姫君』です。

 私が読みたいのは加賀の一向一揆のあたりの時代なんですけど、最近の小説では、「魂の沃野」くらいしかないですねぇ。

 ま、時代が古いけど、同じ室町時代だし、ということで、読んでみました。

 京と吉野に天皇が並立していた南北朝時代。

 南朝の後村上天皇の姫宮、透子は、北朝に寝返った楠木正義を連れ戻しに、乳母と京へ行きます。

 でも、世間知らずのお姫様がいきなり都会に行っても、人さらいにかどわかされるわ、敵の足利義満に正体を見破られるわと、大変。

 だけど、京で敵である人々と接するうちに、透子の考えも変わっていきます。

 なぜ正義が南朝を裏切ったのか。

 正義の本心を知って、透子の心は動かされます。

 そして、天才能楽師観阿弥の子である鬼夜叉――後の世阿弥が、「誰が帝であっても、民の暮らしには関係ない」の言う通り、武家と公家の争いに翻弄されるのは、名も無き民。

 民の為にどうしたらいいのかと考え始める透子。

 南朝は正しい、北朝は間違っていると思っていた透子の内面が成長していく過程が、眩いです。

 そして、透子だけでなく、鬼夜叉も義満も、自分の夢と未来のために、それぞれの道を歩いていきます。

 その後どうなるかは知っていても、明日へ向かう少年少女たちの姿は光に満ち溢れています。

 私の持っている資料では、後村上天皇の皇女は憲子内親王の一人だけで、後に新宣陽門院に宣下されています。

 透子の改名、成長したのが憲子内親王かしら?

 と、勝手に妄想。

 

 ところで、義満って、この作品でも俺様キャラですね。

 まあ、こういう性格と意志でなければ、自分が治天の君になろうとしませんよね。

 それと、世阿弥こと鬼夜叉の美少年ぶりは歴史上有名ですが、本作で鬼夜叉を上回るのは、観阿弥の魔性!

 観阿弥の演技力と魅力に、透子の乳母も義満の正妻も、くらっとしてしまうのですから。

 

↓信じる道を歩む者たち

室町繚乱 義満と世阿弥と吉野の姫君 (集英社文庫)

 

 

2019年6月25日 (火)

倫敦の悩める日本人と迷探偵『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』

*少しネタバレ感想してます。

 

 ヴィクトリア女王が治める大英帝国首都、倫敦に留学した若き夏目漱石。

 でも、下宿先で聞こえる怪しい声に悩まされます。

 漱石は師事しているシェイクスピアの研究家、クレイグ先生に相談し、探偵シャーロック・ホームズを紹介してもらいます。

 そこから殺人事件に巻き込まれる夏目漱石。

 彼は無事に留学生活をおくれるのか――

 島田荘司原作の『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』。

 月刊チャンピオンREDでコミカライズ連載が始まり、1回目から怪しげな感じで、続きがめちゃめちゃ気になって、光文社文庫の原作を読んでしまいました。

 漱石とワトソンの手記が交互に書かれているので、視点が違うとホームズ像がこんなにも違うのかと、ちょっと、いいや、ものすごく驚きました。

 ワトソンは長年の友人であるホームズのことを悪く描かないのは、当然と言えば当然ですが、漱石からみたホームズの第一印象は、最悪。

 だけど、呪いをかけられた男が、一夜にしてミイラになった事件に関わるうちに、漱石のホームズに対する印象は改善し、事件が終わる頃には素晴らしい人物と認めます。

 まあ、漱石と会った頃のホームズは、麻薬中毒者で、無礼千万な男ですが、事件の犯人を追っている時、頭打ってからは正気に戻ったという展開は、唖然としましたが。

 ホームズとワトソンからみた漱石像も、最初は極東から来た異国人に対して舐めている感じがしましたが、最後は敬意をもって接しているように感じました。

 あと、タイトルに殺人事件とありますが、実際には殺人は起きていないです。

 被害者は餓死で、発見者がいかにも呪われて殺された風に小細工したせいで、「殺人がおきた!?」と皆騙されてしまいます。

 ホームズが殺人事件に偽装した犯人を見つけ、事件の謎を解いて、無事に解決するのはお約束なわけですが、可哀想なのは、被害者の姉。

 弟が呪い殺されたのは、自分の不注意のせいだと思いこんで、ショック状態。

 でも、被害者の姉の心を癒すために漱石がとった行動は、後の名作「吾輩は猫である」執筆のきっかけになる、という展開は、思わずにんまりしてしまいます。

 漱石とホームズ。

 実在の人物と架空の人物が、出会うはずが無いけれど、虚実ないまぜな感じが楽しいです。

 チャンピオンREDの連載も、ますます楽しみ。

 著者の後記で、漱石が日本に帰国後、短編「永日小品」でクレイグ先生の消息を書いているとあるので、そちらも読んでみなきゃ。

 

↓そして「吾輩は猫である」に続く

漱石と倫敦ミイラ殺人事件 (光文社文庫)

 

↓クレイグ先生の消息を知りたければこちら

文鳥・夢十夜・永日小品 (角川文庫クラシックス)

 

↓漱石と倫敦ミイラ殺人事件を読んでから読んでみると印象が違う

吾輩は猫である (角川文庫)

 

 

 

2019年6月22日 (土)

真実と偽物『ネガレアリテの悪魔 偽物たちの輪舞曲』

 人造人間と偽物少女のバディ。 

 読売新聞の書評で紹介されていた『ネガレアリテの悪魔 偽物たちの輪舞曲』、19世紀末のヴィクトリア王朝を舞台に贋作を巡る謎に巻き込まれた少女、エディスと、記憶喪失の青年サミュエルの物語です。

 両親を亡くしたエディスは叔父夫婦の養女として育ちますが、自分の出生に秘められたある理由で、養父母や兄たちに負い目を感じています。

 愛されれば愛されるほど、本当の子供ではないのに家族として自分がいることに申し訳なさを感じるエディス。

 当時の貴族社会の意識が、エディスの負い目、罪悪感の種になっています。

 だけど、贋作にまつわる異世界の戦いに巻き込まれ、サミュエルと一緒に敵、ブラウン卿と戦ううちに、ほんの少し変化が芽生えそう。

 サミュエルは自分が何者であるか知らず、贋作に込められた呪い?を解くことで思い出そうとします。

 武器が日本刀で、日本の呪文を唱えるから、日本と関係ある?

 それと、サミュエルはオートマタであると作中で判明しますが、完全な機械人形というより、サイボーグ?

 どうしてそういう体になったかは、たぶん続巻でわかるのだと思いますが、本作で一番驚きなのは、ブラウン卿の出自ですね。

 まさかヴィクトリア女王の――だったとは。

 しかも、ブラウン卿は吸血鬼、人外魔境の存在として世界を滅ぼそうとしている。

 ブラウン卿が並みの人間だったら、これほど大英帝国の闇、怪奇浪漫の雰囲気溢れる作品になってはいないでしょう。

 主役だけではなく、敵役も人外の者で、ヒロインであるエディスがただ一人人間として関わることになりますが、彼女は人としてどう成長していくのか楽しみです。

 サミュエルとの関係も、友だちになりましたが、いつか恋人になるのか?

 そして、エディスの父親は誰?

 

↓贋作を罰するのはエゴイズム?

ネガレアリテの悪魔 贋者たちの輪舞曲 (角川文庫)

 

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