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2019年7月24日 (水)

SF忍法帖『機忍兵零牙 新装版』

※ちょっとだけネタバレ感想

 本屋さんで、ハヤカワ文庫の百合SFフェアなるコーナーが設置されていました。

 そのうちの『機忍兵零牙 新装版』は、いかにもSFのタイトルで、裏表紙のあらすじも、亡国の姫君と若君を助ける忍者と悪の一味と戦うといった内容なので、

 どこが百合だ?

 と疑問を持ったので、思わず購入。

 読んでみると、百合小説というより、やっぱりSF小説。

 地球?から異世界に連れてこられた記憶喪失の忍び、零牙たちが、記憶を取り戻し、自分のいた世界に戻るために無限王朝という敵に戦いを挑むというストーリーは、山田風太郎ばりの忍法+異世界SFと言った方が正しいです。

 真名姫と、忍びの少女、螢牙の関係が、百合と言えば百合……かなぁ。

 無理やり百合ジャンルに入れなくてもいいかも。

 ただ、最後に螢牙の名を真名姫が継いで、忍びの仲間になるというエンディングには、うるっときます。

 ところでこの話、続きは出てないの?

 敵は倒したけど、零牙たちの記憶は取り戻していないし、地球に戻れてないし、まだまだ物語は続くよ、みたいな感じ。

 

↓闇より出でし光の牙

機忍兵零牙〔新装版〕 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

2019年7月10日 (水)

若き復讐者と超絶美形鬼『鬼憑き十兵衛』

※ちょっとネタバレあり

 『ネガレアリテの悪魔』が面白かったので、著者、大塚己愛の日本ファンタジーノベル大賞2018受賞作、『鬼憑き十兵衛』も読んでみました。

 江戸時代初期を舞台にした本作、ヴィクトリア王朝を舞台にした『ネガレアリテ』とはまた違った雰囲気。

 主人公は剣の師匠であり実父を殺された十兵衛と、彼に命を救われた僧形の鬼、大悲。

 師匠の仇をとらんと、細川三斎(細川ガラシャの夫)の愛妾、安珠を狙う中で、十兵衛は異国の少女と出会います。

 少女を紅絹と名づけた十兵衛は、群れから弾かれた者同士、無意識に紅絹と両想いになっていきますが、紅絹はただの少女ではありませんでした。

 作品中、それらしい伏線がありましたが、やっぱりそうかと思った紅絹の正体は、せいれんと呼ばれる人魚。

 そして、安珠の正体も土蜘蛛。

 鬼、人魚、土蜘蛛と、妖怪変化が当たり前のように出てくるけど、それがとってつけたような設定ではなく、物語に必然であると納得できる設定なので、自然に物語に没頭できました。

 キリシタンや公儀隠密も十兵衛に関わり、紅絹がさらわれたり、命を狙われたりして、苦労する十兵衛ですが、そんな時大悲が助けてくれるとこは、いい時に来た! と思う反面、都合よすぎるとも思いました。

 まあ、バディ物の相方が、並の人間ではなく、鬼だから、ま、いいか。

 最後に十兵衛が仇を討って、人ではなくなり、大悲と旅立つ終わり方は、続編を意識している?

 

↓妖怪も怖いが、人の欲もまた怖し

鬼憑き十兵衛

 

2019年7月 4日 (木)

俺様将軍×天才能楽師×じゃじゃ馬内親王『室町繚乱 義満と世阿弥と吉野の姫君』

 現在創作二次小説書いておりますが、室町時代はマイナーなので、イマイチイメージが掴めないので、絶賛遅延中。

 室町時代を舞台にした小説でも読んで、イメージを膨らませなくちゃ、と思って読んだのが『室町繚乱 義光と世阿弥と吉野の姫君』です。

 私が読みたいのは加賀の一向一揆のあたりの時代なんですけど、最近の小説では、「魂の沃野」くらいしかないですねぇ。

 ま、時代が古いけど、同じ室町時代だし、ということで、読んでみました。

 京と吉野に天皇が並立していた南北朝時代。

 南朝の後村上天皇の姫宮、透子は、北朝に寝返った楠木正義を連れ戻しに、乳母と京へ行きます。

 でも、世間知らずのお姫様がいきなり都会に行っても、人さらいにかどわかされるわ、敵の足利義満に正体を見破られるわと、大変。

 だけど、京で敵である人々と接するうちに、透子の考えも変わっていきます。

 なぜ正義が南朝を裏切ったのか。

 正義の本心を知って、透子の心は動かされます。

 そして、天才能楽師観阿弥の子である鬼夜叉――後の世阿弥が、「誰が帝であっても、民の暮らしには関係ない」の言う通り、武家と公家の争いに翻弄されるのは、名も無き民。

 民の為にどうしたらいいのかと考え始める透子。

 南朝は正しい、北朝は間違っていると思っていた透子の内面が成長していく過程が、眩いです。

 そして、透子だけでなく、鬼夜叉も義満も、自分の夢と未来のために、それぞれの道を歩いていきます。

 その後どうなるかは知っていても、明日へ向かう少年少女たちの姿は光に満ち溢れています。

 私の持っている資料では、後村上天皇の皇女は憲子内親王の一人だけで、後に新宣陽門院に宣下されています。

 透子の改名、成長したのが憲子内親王かしら?

 と、勝手に妄想。

 

 ところで、義満って、この作品でも俺様キャラですね。

 まあ、こういう性格と意志でなければ、自分が治天の君になろうとしませんよね。

 それと、世阿弥こと鬼夜叉の美少年ぶりは歴史上有名ですが、本作で鬼夜叉を上回るのは、観阿弥の魔性!

 観阿弥の演技力と魅力に、透子の乳母も義満の正妻も、くらっとしてしまうのですから。

 

↓信じる道を歩む者たち

室町繚乱 義満と世阿弥と吉野の姫君 (集英社文庫)

 

 

2019年6月25日 (火)

倫敦の悩める日本人と迷探偵『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』

*少しネタバレ感想してます。

 

 ヴィクトリア女王が治める大英帝国首都、倫敦に留学した若き夏目漱石。

 でも、下宿先で聞こえる怪しい声に悩まされます。

 漱石は師事しているシェイクスピアの研究家、クレイグ先生に相談し、探偵シャーロック・ホームズを紹介してもらいます。

 そこから殺人事件に巻き込まれる夏目漱石。

 彼は無事に留学生活をおくれるのか――

 島田荘司原作の『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』。

 月刊チャンピオンREDでコミカライズ連載が始まり、1回目から怪しげな感じで、続きがめちゃめちゃ気になって、光文社文庫の原作を読んでしまいました。

 漱石とワトソンの手記が交互に書かれているので、視点が違うとホームズ像がこんなにも違うのかと、ちょっと、いいや、ものすごく驚きました。

 ワトソンは長年の友人であるホームズのことを悪く描かないのは、当然と言えば当然ですが、漱石からみたホームズの第一印象は、最悪。

 だけど、呪いをかけられた男が、一夜にしてミイラになった事件に関わるうちに、漱石のホームズに対する印象は改善し、事件が終わる頃には素晴らしい人物と認めます。

 まあ、漱石と会った頃のホームズは、麻薬中毒者で、無礼千万な男ですが、事件の犯人を追っている時、頭打ってからは正気に戻ったという展開は、唖然としましたが。

 ホームズとワトソンからみた漱石像も、最初は極東から来た異国人に対して舐めている感じがしましたが、最後は敬意をもって接しているように感じました。

 あと、タイトルに殺人事件とありますが、実際には殺人は起きていないです。

 被害者は餓死で、発見者がいかにも呪われて殺された風に小細工したせいで、「殺人がおきた!?」と皆騙されてしまいます。

 ホームズが殺人事件に偽装した犯人を見つけ、事件の謎を解いて、無事に解決するのはお約束なわけですが、可哀想なのは、被害者の姉。

 弟が呪い殺されたのは、自分の不注意のせいだと思いこんで、ショック状態。

 でも、被害者の姉の心を癒すために漱石がとった行動は、後の名作「吾輩は猫である」執筆のきっかけになる、という展開は、思わずにんまりしてしまいます。

 漱石とホームズ。

 実在の人物と架空の人物が、出会うはずが無いけれど、虚実ないまぜな感じが楽しいです。

 チャンピオンREDの連載も、ますます楽しみ。

 著者の後記で、漱石が日本に帰国後、短編「永日小品」でクレイグ先生の消息を書いているとあるので、そちらも読んでみなきゃ。

 

↓そして「吾輩は猫である」に続く

漱石と倫敦ミイラ殺人事件 (光文社文庫)

 

↓クレイグ先生の消息を知りたければこちら

文鳥・夢十夜・永日小品 (角川文庫クラシックス)

 

↓漱石と倫敦ミイラ殺人事件を読んでから読んでみると印象が違う

吾輩は猫である (角川文庫)

 

 

 

2019年6月22日 (土)

真実と偽物『ネガレアリテの悪魔 偽物たちの輪舞曲』

 人造人間と偽物少女のバディ。 

 読売新聞の書評で紹介されていた『ネガレアリテの悪魔 偽物たちの輪舞曲』、19世紀末のヴィクトリア王朝を舞台に贋作を巡る謎に巻き込まれた少女、エディスと、記憶喪失の青年サミュエルの物語です。

 両親を亡くしたエディスは叔父夫婦の養女として育ちますが、自分の出生に秘められたある理由で、養父母や兄たちに負い目を感じています。

 愛されれば愛されるほど、本当の子供ではないのに家族として自分がいることに申し訳なさを感じるエディス。

 当時の貴族社会の意識が、エディスの負い目、罪悪感の種になっています。

 だけど、贋作にまつわる異世界の戦いに巻き込まれ、サミュエルと一緒に敵、ブラウン卿と戦ううちに、ほんの少し変化が芽生えそう。

 サミュエルは自分が何者であるか知らず、贋作に込められた呪い?を解くことで思い出そうとします。

 武器が日本刀で、日本の呪文を唱えるから、日本と関係ある?

 それと、サミュエルはオートマタであると作中で判明しますが、完全な機械人形というより、サイボーグ?

 どうしてそういう体になったかは、たぶん続巻でわかるのだと思いますが、本作で一番驚きなのは、ブラウン卿の出自ですね。

 まさかヴィクトリア女王の――だったとは。

 しかも、ブラウン卿は吸血鬼、人外魔境の存在として世界を滅ぼそうとしている。

 ブラウン卿が並みの人間だったら、これほど大英帝国の闇、怪奇浪漫の雰囲気溢れる作品になってはいないでしょう。

 主役だけではなく、敵役も人外の者で、ヒロインであるエディスがただ一人人間として関わることになりますが、彼女は人としてどう成長していくのか楽しみです。

 サミュエルとの関係も、友だちになりましたが、いつか恋人になるのか?

 そして、エディスの父親は誰?

 

↓贋作を罰するのはエゴイズム?

ネガレアリテの悪魔 贋者たちの輪舞曲 (角川文庫)

 

2019年6月21日 (金)

この女絶対味方じゃないよ『紅霞後宮物語』第十幕

 小玉が主の後宮に、新しい妃が来ることになった『紅霞後宮物語』第十幕。

 ところが病弱だった彼女は亡くなり、代わりに異母妹の仙蛾が妃となることになったけど、これがとんでもない猫かぶりでしたね。

 献身的に姉を看病し、後宮に入ってからもそつなくこなしていたけど、自分から文林のお手が着くように小玉にお願いしちゃうあたりが、やっぱり妃らしいといいますか。

 味方になるどころか、新たな敵になりましたね。

 まあ、後宮では自分以外の女は皆ライバルなのですから、真桂や貴妃みたいな信奉者のほうがめずらしい。

 でも、仙蛾が来てから、小玉やお付きの女官たちの具合が悪くなって、流行り病ということになっているけど、本当は誰かに毒盛られていたし。

 状況は、仙蛾があやしい。

 実は姉の病死も、仙蛾がこっそり毒盛っていたんじゃない!?

 自分が妃になって、いずれは皇后に――なんて野望を抱いていたりして。

 それなのに、文林は仙蛾に手を出してた。

 好みじゃないとか、政治的に仙蛾を寵愛して子供ができるとまずいとか言っておきながら、しっかり子供ができることしてたから、この巻で文林の好感度は一気に下がります。

 だって、妻である小玉も表向きは仙蛾の懐妊を祝いながら、怒ってます。

 自分の具合の悪い時に夫の側室の懐妊知らされたら、心離れるわ。

 またまた夫婦の危機?

 どうなることやらと思いつつ、続くのでありました。

 

 『紅霞後宮物語』、文庫本で十冊目、外伝も含めると十三冊。

 そろそろ飽きがきて、読むの止めちゃおうかなーとちらっと思いましたが、小玉の人生を見届けなければいけないと思うから、やめられないのよねぇ。

 周りは小玉の味方ばかりじゃない、敵も大勢いるし、どうしてもそりが合わない人もいる。

 世の中そんなもんだけど、そりが合わなくても、実は陰でこっそり助けてくれていたというのは、救われる思いです。

 小玉の周辺の人たちの中で、特に気になるのは、死んだことにされている、あの皇子――

 母国を離れ、新しい出会いをした彼の心の変化は、幸せになる予兆か?

 

↓誰が敵で誰が味方か

紅霞後宮物語 第十幕 (富士見L文庫)

2019年5月25日 (土)

蘇る妖狐『玉藻の前』

 ああ……美しい……

 岡本綺堂の『玉藻の前』が中公文庫で復刊です。

 学研Ⅿ文庫のは持っていたのですが、手放していたので、中公文庫で買い直し。

 山本タカトの表紙がイメージにぴったりで、今度はずっととっておこうと思います。

 

 平安末期、九尾の狐にとり憑かれて傾国の美女となった藻――玉藻と、幼馴染みの千枝太郎。

 二人を中心に、関白忠通と左大臣頼長兄弟の権力争い、玉藻に恋して身を亡ぼす男たち、千枝太郎の師匠、陰陽師安倍泰親が妖を封じようと活躍する姿が描かれています。

 『玉藻の前』は、大正六年に「婦人公論」で連載されていたので、つづられる文章や設定は、現代の読者が読んだら古臭いなぁと思うでしょうが、古典物語を読んでいるようでいて、繰り広げられる恋と妖退治は、わくわくします。

 何年かぶりに読んで、初めて読んだ時と同じように感動しました。

 井川洗厓の挿絵も再録してあるので、連載当時の読者の気分になりました。

 巻末には、岡本綺堂生前には単行本未収録だった「狐武者」も収録されているので、狐つながりでとても面白かったです。

 『玉藻の前』が殺生石伝説をモチーフにしているのなら、「狐武者」のほうは、「太平記」に記されたエピソードを、岡本綺堂が空想を膨らませて書いた短編です。

 『玉藻の前』と同じく、「狐武者」に登場する狐も、心寄せる男に仇なすものには容赦しませんが、どちらかと言うと、葛の葉のイメージが重なる狐だと感じました。

 

 山本タカトがコミカライズしてくれないかなぁ。

 そんな願望を抱きつつ、『玉藻の前』読み終わりました。

 

↓地獄の底まで恋するおまえについていこう 

玉藻の前 (中公文庫 (お78-8))

 

↓さちみりほと波津彬子のコミカライズがオススメ

伝奇絵巻 玉藻の前

幻想綺帖 二 『玉藻の前』 (朝日コミック文庫)

 

 

 

2019年5月23日 (木)

傾国の美女なんていなかった『楊貴妃 大唐帝国の栄華と滅亡』

 映画『空海 美しき王妃の謎』を観て以来、楊貴妃や長恨歌に興味を持つようになりましたが、中国の歴史は専門外なので、初心者向けの本がないかなぁと思っていたら、講談社学術文庫で『楊貴妃 大唐帝国の栄華と滅亡』が出たので早速読みました。

 玄宗の生い立ちから安史の変までをポイントをついた説明、長恨歌や楊貴妃死後の歴史書・中国と日本文学に与えた影響などが解説してあるので、映画の背景をより理解できました。

 楊貴妃は、玄宗をたぶらかした悪女みたいなイメージが一般的ですが、実際に玄宗に取り入って政治に口出ししていたのは楊国忠や親族など。

 楊貴妃本人は後宮で栄耀栄華を誇っていたみたいですが、政治にまでは関与していなかった。

 ということは、楊貴妃のことを傾国の美女と呼ぶのは間違いではないかと感じました。

 楊貴妃を傾国の美女にしたのは、周囲と歴史、ということでしょうか。

 

 あとがきによると、もともと中公新書で出版されていたのを改めて講談社学術文庫から出したとのこと。

 それならもっと早く、できれば映画公開前に出してほしかったなぁ。

 

↓国を滅ぼした美女?

楊貴妃 大唐帝国の栄華と滅亡 (講談社学術文庫)

 

↓映画見直したくなりました

空海―KU-KAI―美しき王妃の謎 [Blu-ray]

 

↓映画原作&コミカライズ

沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ一 (角川文庫)

空海 -KU-KAI- 上巻 (カドカワデジタルコミックス)

 

2019年5月16日 (木)

失われた作品がここにある『一九三四年冬――乱歩』

 『梔子姫』?

 江戸川乱歩の未発表作?

 今は亡き久世光彦が書いた『一九三四年冬――乱歩』が創元推理文庫で出ていたのを見つけて、思わず手に取りました。

 最初、集英社から出版されて、山本周五郎賞を受賞、直木賞の候補にもなったので、タイトルだけは知っていましたが、当時はそれほど乱歩に興味はなく、スルーしていました。

 改めて読んでみると、昔の私に言ってやりたい。

 なんで読まなかったんだー!

 こんなに面白かったなんて、読まずにいて損していた!

 で、今は読めて良かったと安堵しています。

 

 内容は、1934年、昭和九年の冬の出来事。

 人気作家、江戸川乱歩は雑誌「新青年」に「悪霊」を連載していたが、内容に筆が進まず、休載を繰り返していました。

 そして、とうとう家族にも編集部にも黙って家を出て行き、麻布のホテルに身を隠します。

 そのホテルでの4日間の出来事を書いたのが、『1934年冬――乱歩』。

 4日間乱歩が何していたかだけを書いていたら、読まなかったかもしれません。

 だけど、乱歩が書いた『梔子姫』という新たな作品が同時進行で進められています。

 ホテルでの乱歩の様子と『梔子姫』執筆状況と内容が、夢と幻が絡み合うように展開するので、読んでいて蜜の味がする毒を舌の上で味わうような思いになりました。

 もちろん『梔子姫』は久世光彦の創作で、乱歩が書いたものではありません。

 でも、乱歩の未発表作を久世光彦が見つけて、自作の中に組み込んだのではないかと錯覚してしまうくらいです。

 また、ホテル内での乱歩のちょっと、いや、とっても引く変態行為の描写が、まるで見てきたかのように書いているので、乱歩初心者には、「乱歩って、こんな人だったんだ」と思うと思います。

 乱歩の変態性は指摘されていることなので、そうしたこともひっくるめて書いた乱歩像に、久世光彦の乱歩愛をひしひしと感じます。

 ああ、乱歩の書いた小説が読みたくなった。

 

↓乱歩以上に乱歩らしい小説が秘められている

一九三四年冬―乱歩 (創元推理文庫)

2019年5月12日 (日)

ホップ・ステップ・ジャンプ――『横溝正史探偵小説コレクション4 迷路荘の怪人』その2迷路荘の怪人

 さて、『横溝正史探偵小説コレクション4 迷路荘の怪人』表題作、角川文庫(『迷路荘の惨劇』)に長編版、光文社文庫(『金田一耕助の帰還』)にオリジナル版の短編が収録されているので、読み比べてみました。

 「迷路荘の怪人」は、最初短編として雑誌に連載、後に加筆して中編化して単行本化、さらに加筆改題した「迷路荘の惨劇」を出版。

 三段階で書かれて出版されたことになります。

 『横溝正史探偵小説コレクション4』に収録された中編の本作は、短編を加筆修正したので、一部の事件がとってつけた感があります。

 横溝正史もそれが不満だったのか、長編版は、一連の事件が全て繋がっているように自然です。

 書き直した甲斐があったと思えてなりません。

 ラストは短編では、実は犯人に命を狙われていた篠崎慎吾が娘と今後の生活について語り合い、めでたしめでたしとなりますが、中編ではカット、金田一耕助が糸女から青酸カリの小瓶を取り上げるところで幕引きになります。

 加筆修正長編版は、そこからさらに金田一と篠崎との会話が続きます。

 このように、冒頭は一緒でも、終わり方が違うと物語の印象が変わるのが「迷路荘」の面白さか。

 迷路に迷った末にたどり着いた出口。

 そんな感想を持ちました。

 

↓迷路で見つけたのは……&読み比べ

迷路荘の怪人 (横溝正史探偵小説コレクション)

 

↓連載オリジナル版短編

金田一耕助の帰還―傑作推理小説 (光文社文庫)

 

↓初の単行本中編

迷路荘の惨劇 金田一耕助ファイル 8 (角川文庫)

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