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2018年12月 5日 (水)

美しく残酷な犯罪『由利・三津木探偵小説集成1 真珠郎』

 名探偵由利麟太郎と新聞記者三津木俊介の登場するシリーズ『由利・三津木探偵小説集成』が刊行開始。
 その第1巻は、表題作の「真珠郎」ほか、5編。
 巻末の解説によると、由利先生と三津木のどちらか、または二人が登場する一般向けの全作品を、「初出または初刊のテキストに準じて再編集」がコンセプトとのこと。
 つまり、少年向けのは収録されない、ということです。
 「集成」とタイトルにあるのは、こういう訳なんですね。
 まあ、少年向けのは大人向けと少年向けのを同時収録しても、読者の年齢に合わせて書かれたとはいえ、読んでいて違和感といいますか、統一感がないだろうから、賢明な判断か。
 作品は発表順に収録されていて、最初は昭和10年(!)発表の「獣人」。
 由利先生がまだ「学生上がり」の若い頃の物語です。
 百貨店の飾窓に陳列されていた女の生首が発見、第二の犯行が起こるが、偶然由利先生が見た犯人の姿は、ゴリラそっくりの怪物だった――という設定は、なんとなく乱歩作品を思い出させます。
 由利先生の名前は、角川文庫とか他の単行本では、「麟太郎」に修正されているそうですが、「集成」では初出どおり「燐太郎」になっています。
 「燐太郎」から「麟太郎」へ。
 単なる誤植か、横溝正史の考えが変わったのかは、謎です。
 
 「白蠟変化」は、老舗の若主人が新妻殺しの犯人として、死刑決定されたニュースから始まります。
 若主人の冤罪を信じる女は、なんと人を雇って穴を掘らせ、恋人を脱獄させようとします。
 この設定は、昭和だから可能であって、現代の東京ではとても無理。
 苦労して脱獄させたのは恋人ではなく、詐欺・恐喝・強盗・誘拐・強姦の罪で収監されていた白蠟三郎という、とんでもない極悪人でした。
 凶悪犯が脱獄したら、新たな事件が起こるのは必然。
 我らが名探偵由利先生と、新日報社の花形記者、三津木が事件を追います。
 三津木がシリーズで初登場。
 すでに二人は相棒同士。
 どんな風に出会ったかは書いてないので、どうしてこんなに二人は仲良しなの?
 それは置いておいて、白蠟三郎を捕まえる過程で若主人の新妻殺しの真犯人もわかるのですが、実は被害者は死んでいなかった、という真実が。
 若主人は冤罪が晴れ、恋人と結婚式を挙げるその時、悲劇が……
 後味が悪い結末です。
 げに恐ろしきは、女の情か。

 「石膏美人」は、三津木の恋人の家に起こった事件。
 恋人の父、一柳博士とその友人藤巻博士の間に起こった誤解が悲劇を生みます。
 ある老女の思慮分別のない善意から、子供の取り換えをしたために、しなくてもいい誤解と憎悪が生まれ、子殺しが行われます。
 誤解は解け、犯人は己の犯行を悔いて死にますが、誰も幸せになれない……
 可哀想に、三津木は失恋。
 そして、由利先生は最後にこう言います。
「しかしね、三津木君、世のなかにはまだまだ恐ろしいことがある。君たちの想像もつかないような恐ろしい罪悪が行われつつある!」
 その通りだな、と思いました。

 「蜘蛛と百合」は、扶桑社文庫の『真珠郎』にも収録されていたので、読んだことがあるのですが、改めて読み直してみても、怖いわ。
 ストーカーにつきまとわれた挙句、恋人を殺され、強姦され、背中に無理やり刺青を彫られた女。
 女の妖しい魅力にくらっときてしまう由利先生と三津木。
 不幸な女と思いきや、実は恐ろしい女王様だった女の人物像に、谷崎潤一郎の「刺青」の女の成れの果てのような気がしました。

 「猫と蠟人形」は、三津木の妹の夫が殺された事件。
 容疑者は、妹の恋人。
 妹のために、三津木は事件の真相を追います。
 犯人は、夫に恨みを抱いていた人物ですが、三津木は犯人を見逃してやります。
 いいのかなぁと思いましたが、妹の夫の所業も、殺されても仕方がないなぁと思うので、ま、いいか。

 表題作の「真珠郎」、今さら説明するまでもなく、由利先生シリーズの中では傑作。
 由利先生を金田一耕助に変更してドラマ化されていますが、一度くらい原作通り由利先生でドラマ化してくれないかと思います。
 JETのコミカライズでは、原作通りでしたね。
 六人社版単行本の江戸川乱歩や水谷隼の序や解説、横溝正史の自序も収録されているので、扶桑社文庫を買い逃した方は、読めて嬉しいかも。
 最後にダイジェスト版「真珠郎」がイラストと共に復刻されています。
 短い枚数で簡潔に事件が最初から最後まで書かれているので、ネタバレしてます。
 本編を先に読むか、ダイジェスト版を先に読むかは、あなた次第。

 次回配本は「夜光虫」。
 早く発売日にならないかしら。
↓甘い罪、苦い真実、美は悪

由利・三津木探偵小説集成1 真珠郎

 
 

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